S物語(33) 『イスタンブールの奇跡~授賞式&パレード』

パレード


スチービー物語(33)
  『イスタンブールの奇跡~授賞式&パレード』


 (※ 『S物語』目次 → 


今でも“Ring of Fire”の曲を聞くたびに、有頂天になって歌い踊ったあの夜のことを思い出す。

デュデクがシェフチェンコを阻止した瞬間、俺たちはキーパーの元へと猛ダッシュした。
足を痙攣していたはずのキャラが一番早かった。
続いて、フィナン、ルイス・ガルシア、リーセ、アロンソ、ハマン、俺、そして残りのみんながデュデクの上に折り重なった。

それから俺はファンに挨拶しに行った。
たくさんのカメラが回る中で「イエ――ッス!」と叫びながらピョンピョン跳ねてトラックを一周した。


歓喜に溢れる顔と顔。 
その中に友達やキャラの家族を見つけた。


グラディエイター

リバプールの横断幕をジックリと眺めた。
俺がグラディエイターのカッコをしてる写真もあった。

泣いてる大人がたくさんいた。
子供をハグしている父親もたくさんいた。
あれ、学校サボらせたのかな?

リバプールがヨーロッパの頂点に返り咲いたことで、みんなこんなに幸せになれたんだな。

もうマンUファンにはヤジらせないぞ。
ヤツラはヨーロッパでたったの2回しか優勝してない。
俺たちは5回だぞ~!
5回ということは、このカップは永遠にアンフィールドのモノだ。

思わず涙が溢れそうになったが、グッと堪えた。

ファンに捕まって引きづりこまれそうになった。
ちょ ちょ ちょっと~。ヽ(○´3`)ノ

スカイのジェフ・シュリーヴスが俺から話を聞き出そうとしたが、
俺の足はヨロヨロ、頭は真っ白、口はモゴモゴ、失神寸前だった。


シェフチェンコ


暫くして、ピッチに茫然と座っているシェフチェンコに気付いた。

たった一回のミスキックでクオリティが下がるわけがない。
彼はいつだって真のチャンピオンだ。

俺は近寄り、ギュッと抱きしめた。
深い悲しみに満ちた目をしていた。

後になって、ミランの選手が準優勝のメダルを捨てたことを知った。
その気持ちはよくわかる。
俺だって、悔んでも悔やみきれない経験をしてきた。

カーリング・カップでのオウン・ゴール・・・
ユーロ2004フランス戦での敵へのバックパス・・・


ところが、シェフチェンコは俺に “Well done”と言い、
後でユニ交換する約束をした。

驚いた。
最悪の夜を耐え忍び、それでもまだ敵を祝うことができるなんて…
彼に対する尊敬の念が一層強まった。

マルディーニもまた ピッチの中でも外でも一流の選手だった。
俺と握手をしながら祝福の言葉をかけてくれた。
授賞式の準備が整った時“Enjoy it”と言ってくれた。

シェフチェンコのユニ
「シェフチェンコのユニはオレの宝物」


キャプテンはチームの最後尾でメダルをもらうことになっている。
胸に光るメダルにキスをしながら、心の中でオヤジに感謝した。

表彰台に立ってラファとコーチを待っている間、
UEFAの連中が俺にあぁしろ、こうしろと指図してきたが
全部 無視!!

俺の目は銀色に光るカップだけを見つめていた。
さぁ、やーーっとタッチできる。
もう迷信なんて気にしなくてもいい。

ちゅ

そっとカップに口づけをした。
気が狂ったのかと思われるかもしれないけど、その瞬間
カップが「アンフィールドに連れて帰って」と言った気がした。
俺とカップは相思相愛の仲だと感じた。

さぁ、早くカップをこの手に!
ところがUEFAのヨハンソンはカップを持ち上げたまま、ぐずぐずしていた。

キャラがイライラして「早く渡せよ!」と怒鳴った。
欧州サッカーで一番権威のある人物にぶちギレたんだ。

俺はヨハンソンからカップを奪い取ると、高く高く「星まで届け!」と掲げた。
その瞬間、みんな気が狂ったようにピョンピョン跳ね、赤い花火が上がり、赤い紙吹雪が舞い上がった。

紙吹雪
      キャラに怒鳴られたヨハンソンさんwww 


魔法にかかったみたいだった。
世界中の人々が俺を見ているような気分だった。

アロンソはカップにブチュッと音を立ててキスをした。


アロンソ


俺も何度もキスした。
アレックスは家のテレビでその様子を見ていた。
家に帰るなり、こう言われた。
「あなた、私に一年間でくれるキスよりたくさんのキスを
 一晩であのカップにしてあげてたわね!」

キャラと俺は大声で”Ring of Fire”のチャントを歌った。
調子っぱずれだったけど、いいじゃないか。

キャラと


ドレッシング・ルームに戻ると、チェアマンのデビッド・ムーアが泣いていた。
ありがとう、ムーアさん、あなたのお蔭です!

大勢の人間が部屋に押しかけてきた。
その中に、なんとウリエがいた。

前監督が来たことをよく思わない人もいたが、俺は大歓迎だ。
自分が去った後にクラブが優勝するのをイヤがる嫉妬深い監督もいる。
ウリエは違った。
「よくやった!」と純粋に喜んでくれた。


少女


スタジアムを出てホテルに帰ると、大勢のファンでごった返していた。
WAGS(妻&恋人)もたくさんいた。
俺はすぐに眠りたかったが、サインをしたり、写真を撮られたり、ビールを飲みながら延々と試合の話をした。

ラファもやってきて、ニコニコしながらワインを飲んでいた。


外が明るくなって来た頃ようやく解放されて、ベッドに倒れ込んだ。




2時間ほど眠って、ハッとして目が覚めた。
ここはどこ?
そこにいるのは誰?!
ルームメイトのアロンソは彼女と出かけたはず。。。

なんと鏡台の上にカップが立っていた!

自分で持って帰った記憶はなかった。
部屋には俺とカップのふたりっきり。

「おはよう」とカップに言い、20分程じっと見つめ合った。




しまった!
朝食の時間だ。
みんなカップの行方を心配してるに違いない。
下りて行くと、案の定 大騒ぎになっていた。

「カップはどこだー?!」
キャラが叫んでいた。

俺は笑いながら答えた。
「パニくるなって。 
 俺の部屋にあるから、見に来いよ」

みんなが部屋に押しかけてきた。
それから下におりて、カップを囲んで記念写真を何枚も撮った。


ジョンレノン空港


飛行機はイスタンブールに別れを告げ、ジョン・レノン国際空港に着陸した。
そこでも大騒ぎさ。

メルウッドに戻ると、すぐさまオープンバスに乗って街へ。
外国の選手は国際試合に備えてそれぞれの国に帰らないといけなかったから、パレードは試合の翌日に決行されたんだ。

パレード


リバプールの街はどこもかしこも人々でギッシリ!
オープンバスの上でシャンペンを飲み、ゲラゲラと笑いあった。
かわるがわるカップを掲げてファンに披露した。

外人選手はリバプールというクラブの凄さを初めて知り仰天していた。
俺はトレブルを取った時にパレードは経験していたが、大耳は格別だった。


信号機の上に

騎馬隊がバスを先導していたが、詰めかけたファンが大怪我をしないかと心配になった。
人々は街灯や木に登り、ビルの窓からも手を振っていた。
バスはシティ・センターで45分もの間 身動きできなくなった。

それでも警察はこのミッション・インポシブルをやり遂げ、カップは無事マージサイドに帰ってきた。

「人生で最高の2日間だったな」


さぁみんな、パーティだ!

飲んで 騒ごうぜっ!!!



   ― おわり ー




これで「イスタンブールの奇跡」の章は終わりです。
訳していて、とっても楽しかったです。

シセダンス

・メダルを受け取った後、カップのそばに寄った選手ひとりひとりのリアクションの違いが面白かった。

変な帽子を被ったリーセが真っ先にキス
キャラはちらりと見ただけ(キャラらしい!)
スミチェルもキス
ヒーピアは恥ずかしそうにカップの足の方をちょんと触るだけ
シセはカップを女性に見立てて不思議なダンス
フィナンもチュッ

スチービーがカップを掲げるシーンは何度見ても鳥肌が立ちます。
ヨハンソンがキャラに怒鳴られたシーンが笑えました。

パコちゃん
スチービーがパコちゃんの耳にブチューっ!
 (TVをデジカメで撮った画像♪)

スチービーはよく耳にちゅをしますよね。
そんなことされたら、腰砕けになってしまいそう。(´ `*)♡

・・・にしても、なぜパコちゃんは裸なの?ww


・モリエンテスとラファのドアップも懐かしい!


・ラファが飲むのはビールじゃなくてワインなんですね。


・シェフチェンコとマルディーニの話もとてもステキでした。
 あの頃のミランはとても上品な大人のチームでしたね。


キャラ


・私は2004年の春からロンドンに住んでいたので、パレードの日は一日中TVに噛り付いていました。
試合のハイライトが何度も繰り返され、空港ではレポーターが飛行機が着くのを今か今かと待ちわびていました。

スチービーがタラップからカップを持って下りてくる様子が、まるでビートルズのようだったことを覚えています。

パレードの様子も何度も何度も放送されて、とにかくその人の多さにビックリしました。
そして、リバプールを好きになって本当によかった!と思いました。

好きというだけで、なんだか自分まで偉くなったような気がしました。
こんな日がまた来ることを心から祈っています。
できれば、スチービーが現役のうちに・・・

5つのカップ

コメント一覧

mori2

2013.08.08

編集

No title

写真が入るとまた一段とあの時が鮮明に思い出されますね♪
グラディエイターのカッコのジェラードよく見つけてくれました(初めて見た~)
いつ見てもソックスニーハイ履きちょっと内股のルイガルの乙女っぷりが笑えます。
ジョンレノン空港に大耳を持って降りるジェラードの足元は実は・・・とか(笑)

スアレスの発言は悲しかったけれど、
うちには世界一のキャプテンがいるからいいやい(やや強がり??)
今いる選手にもこんなパレード味あわせてあげたい
(リバプールでもレイナに宴会部長になって欲しかったなぁ)
本当にもう1度大耳掲げるキャプテンが見たいです。

マルヲさんのスチービー物語どれも大好きです♥ありがとうございました。



〇━

2013.08.08

編集

mori2さん

> 写真が入るとまた一段とあの時が鮮明に思い出されますね♪

ツイッターは手っ取り早くていいけど、ブログならではの魅力ってありますよね♪
2005年からずっと溜めておいた画像たちが、やーーーっと見てもらえた!と喜んでます。(●^o^●)
ボツになっちゃった画像にもイイのがたくさんあったんだけど。(。´Д⊂)

> グラディエイターのカッコのジェラードよく見つけてくれました(初めて見た~)

実は私もこれは見たことがなくて、今回初めて検索して見つけた画像なんです。
キャラと一緒に映画「300」に扮したTシャツなら保存してあったんだけど。
それはアテネの時だったかな?


> いつ見てもソックスニーハイ履きちょっと内股のルイガルの乙女っぷりが笑えます。

ね。(*´ω`)
PK合戦で、スタートの5人に入れてほしいとラファに言ったらしいけど、手で顔を覆ってる写真を見ると、選ばれなくてよかった♪ って思っちゃいます。

> ジョンレノン空港に大耳を持って降りるジェラードの足元は実は???とか(笑)

サンダルでしたっけ?w

> スアレスの発言は悲しかったけれど、
> うちには世界一のキャプテンがいるからいいやい(やや強がり??)

強がりじゃなくて、心からそう思いますよ!
「クラブに忠誠心のある選手なんて、もういない」という記事を読んだけど、
「いやいや、スチービーがいるでしょ!」って大声で叫びたい。
キャラもアッガーもいるし♪

ローマのトッティは私のサッカー初恋の人なんですけど、彼も生涯ローマです。
スチービーと同様、マドリなどから声がかかったけど、どうしてもローマを捨てられなかったんです。
2人とも移籍してたら、もっとたくさんのカップ取れたとは思うんだけど・・・

でも、そんな不器用で一途な男たちが大好きです!!
(っ≧ω≦)っ

コメントの投稿

名前

タイトル

パスワード:

非公開コメント

管理人にのみ表示

FC2Ad